天が出した箱を机の上に置いて、話し合う。
「見た感じ、何の変哲もなさそうだけど…」
「そう、だから俺も中身何かとか気になっちゃって」
「で、中身は?」
「それが、開けても空だったんだよね」
「…空?」
「うん、ほんとになんにも入ってない感じで」
「何かに使おうとして、出しておいた…とか?」
「うーん…。
そうなのかな」
「まあ、それはここでめちゃくちゃ必死に知らないふりしようとしてる奴が知ってるだろ」
「先輩いつから見てたんですか…?!
はっ、もしかしてずっ…「晴、説明」…はーい…」
「…えーっと、ってことはこの箱晴さんの?」
「ほんとは、箱じゃなくて袋でも良かったんだけど…。
大事なのは外じゃなくて中だし」
「…中…って、空の…?」
「空だけど、空気が!入ってるんだよ」
「……あー、なるほど」
「すっごく分かった」
「晴さん…」
「…でも、もうバレちゃったし怒られそうだからみんなで何かに使ってくださーい…」
「よし、捨てるか」
「箱に罪はないんだけど、ちょっと、ね…」
「っと、そうだ」
「?」
「そういえば晴についての話してなかったなと思って。
…まあ、大した話じゃないけど」
と言うと全てを知ってる流衣がちょっと微妙な顔をする。
本当に大した話じゃないから話さなくても良いんだけど。
…天や雨月たちが聞きたそうだし。
「それについては俺たちも知ってるから、冷さんの話だけで分かりにくかったら聞いてね」
「…流衣?」
「ああ、多分分かりにくいと思うしな」
「…お前ら2人楽しんでるな…?」
「もちろん」
声を揃えて言う2人に若干話すのがめんどくさくなりつつ、ざっと晴…と、ヒロの身に起きたことを話す。
…話してる間、晴がちらちらこっちを見てた気がするけど気にしないでおいた。
「ってわけで、まあ明日には戻るらしいけど」
「だから1日だけ…。
って言うより、そんな不思議なジュースなんて俺たち見たっけ」
「…俺は記憶にないかな…。
でも、晴さんとヒロさんがって言うなら寮に届けられてた…んだよね?」
「天がいなくてよかったな」
「藍にぃ、それどういう意味…?」
「天が小さくなったら余計にはしゃぎまくるし大変だろうと思って」
「…賑やかにはなってたよね」
「…ちょっと楽しそう…」
「もし俺が小さくなったら千草と遊ぶ!!」
「はいはい」
「…それで、ヒロさんたちとは明日寮の前で会うんですよね?」
「うん、そうなってたはず!
ヒロ君が戻れたらお蕎麦食べに行くって約束してるし楽しみ〜」
「…さすが晴さん…」
「んじゃ、そろそろ寝て明日に備えるか」
「さんせーい!
箱の謎も…うん、まあ納得は出来たし!」
「誰かの大切なもの、とかじゃなくてよかったね」
「確かに。
仕事のものとかだったら大変だし……ってあ!」
「?」
「レッスン室で踊った時に晴さんに聞きたいことあったの忘れてた…」
「まあ、それは明日でもまた聞けるだろ。
明日になったら会えなくなるわけでもないし」
「…じゃ、明日で!
おやすみ〜」
「おやすみ。
…相変わらず、天はすぐ寝るな…」
「まあ、それが天の良いところ、ってことで。
今日に限っては俺たちも見習わないと…って竜、今日はちゃんと部屋で寝てね」
「……ああ」
「あっ、浅葱もね?
昨日は部屋にいたと思ったらずっと起きてたみたいだし…」
「…善処はする」
「ってことで、また明日〜」
「また明日!」
各自、準備を終えて部屋に向かう頃。
1階メンバーの俺たちはなんとなく部屋に向かわず、話をしていた。
「先輩、よく晴くんこっちに連れて来ましたね…」
「このメンバーで残ってすぐそれか」
「いや、だってこう…危険を感じたりしないのかなーって…?」
「危険なら常に感じてるし対策をしてるから大丈夫」
「…対策…?」
「晴には一生教えない」
「…えー…」
「まあ、それはそうだとしても…。
なんか、こんな風にみんなで話すの久しぶりですねー。
前の親睦会以来…?」
「ああ、あの2人残されたやつ」
「あの時はほんとたまたま仕事が入っちゃっただけなんで!
今度またやりましょう♪」
「そういえば、祐那たちって飲むならどんなの飲む派?」
「アタシは〜…甘いやつとか、可愛いのとか♪
でも勧められたらだいたい1本くらいは飲みます!」
「なるほど」
「ボクはー…」
「なんとなく言わなくてもわかる」
「以心伝心ですか…?!」
「違います。
どうせ、あんまり強くないとかだろ」
「…ほんとに伝わってる…!!
ボク、家族みんな強くないからかあんまり飲めないんですよねー…。
代わりに、酔ってる先輩見てます!!」
「…とりあえず晴の前では飲まないようにするか」
「それが良いと思いまーす」
「ボクはいつでも付き合いますよ!」
「ま、いつかな」
「…この一件がなかったら、きっと晴くんと先輩の関係を知らなかったんですよね…」
「ちょっと待て」
「ボクと先輩いつもこんな感じだけど…?」
「いや、えーっと。
こう、担当ユニット的にあんまり関わらないし、こんなに話すのを久しぶりに見たっていうか」
「…ああ、確かに?
まあ、同じ寮にいても悠希と晴が喋ってるの想像しにくいけど」
「ボクと悠希先輩、意外に共通点あるんですよ!」
「…どんな?」
「好きなものに対して一途…!」
「よし、寝るか」
「おやすみ、晴くん♪」
「ここからが話の良いところなのに…?!」
「話のいいところ、って言っても悠希のわたあめ好きは知ってるしな…」
「晴くんの先輩好きも知ってるし…?」
「そこで硬い友情が結ばれてるんです!」
「…へー…?」
「全く興味なさそうな先輩も好き…!!」
「えーっと、それで終わりそうならアタシ寝てもいい?」
「…時間も遅いし、ボクも寝まーす」
「あんだけ言って続きないのか」
「あっ、聞きます?!
ちゃんと話すと5時間…「寝る」……おやすみなさーい」
真剣に聞いたところでこれからどう変わるわけでもないし、適当なところで寝ることにして。
…いやまあ、ほんとに大切な話なら2人から今度聞いたほうが良いな、ってことで。
晴のAquICE寮泊まり日は無事…多分、無事に終わった。
→次の話(5話)
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