「……はあ」
「…冷さん、なんかすごい疲れてない?」
「例のあれか」
「そう、あれ。
…もうお前たちを尊敬し始めてる」
「…お疲れ様でーす…」
「って、今日この時間に呼ばれたってことはもしかして?」
「この時間までレッスンだよ…。
ダンスなんてほぼ経験ないからな」
「…ああ…」
「ま、頑張れ」
「後でまた悠希とかに立ち位置……あ」
「…あ?」
「流衣、明日オフだったよな?」
「…オフだけど…?」
「1時間くらいレッスン見てもら…」
「明日はちょっと…」
「断るの早すぎないか?
さすがに」
「いや、冷さんだって休日の仕事は断るでしょ」
「…確かに」
「ってことで、頑張って」
「…はあ、自主練するか…」
「……今から、少しなら練習付き合おうか?」
「ありがとうよろしく」
「…早い…」
「じゃ、レッスン室先行ってるから、5分後くらいに」
「…わかった…けど、5分後…?」
不思議に思っている俺を置いて、早足で歩いて行ってしまう冷さん。
…あんなこと言いつつレッスンはちゃんとやるし自主練もしてるんだからすごいな…。
「よし、じゃあ俺も頑張ってアドバイス…出来ることがあれば、しようかな」
・・5分後・・
ガチャ
「冷さん、入るよ……ってあれ、みんないる…?」
冷さんだけだと思っていたレッスン室には悠希さんに晴さん、ヒロさんと祐那さんがいて。
…何故か、晴さんと祐那さんが他3人の前で仁王立ちをしていた。
「あ、流衣くんお疲れ様〜♪」
「お疲れ様でーす…。
えっと、これどんな状況…?」
「柳原先輩たちがどうしたらダンスが上手くなるか&アイドルらしい雰囲気を身につけられるかの相談会?」
「‥相談会」
に、しては2人がめちゃくちゃ怒ってるようにしか見えないけど…。
よく見たら、3人は正座じゃなくて普通に座ってた。
…いやそれでもちょっと謎だけど…。
「レッスンの方は順調ですか?」
「順調…だったらこうはなってないんだよね〜。
あと3日だし、気合い入れていかないと…って感じ?」
「…なるほど…。
曲の方はもうあるんですよね?
竜が頑張ってたし…」
「うっ…」
…竜が頑張ってた、の言葉でダメージを受ける3人。
そんなに…?
「ちょっと踊ってみてもらって良いですか…?
俺ここで見てるんで」
「だって、頑張ろうね!」
「…今度のも録画頼む…」
「あ、じゃあ俺撮りまーす」
…どうなってるのかは分からないけど、とりあえず見なきゃ始まらないってことで。
曲をかけてダンスが始まるのを見る。
…。
……。
…あー、なるほど…。
カチッ
「分かりました」
「わかった?」
「冷さんが全体的にだめ」
「…全体的にダメ」
「あと、悠希さん踊れてはいるんですけど動きが小さいというか、ちょっと照れてます?」
「あはは、あんまり人前で踊るの慣れてないので…」
「頑張ってください」
「…はい」
「ちなみにこれ、織くんとかには…」
「見せてない見せてない」
凄い勢いで首を横に振る5人。
…まあ、見せてたら既に5人で踊れてなさそうだし…。
「ですよね…。
じゃあもう、レッスンあるのみですね!」
「…はーい…」
「あ、言い忘れてたんですけど」
「…俺か」
「ヒロさんは…動きが固い気がします。
柔軟やってます?」
「……努力は」
「じゃあ、ヨガをやってみるとか…。
あ、俺がやってる柔軟運動教えますか?」
「お願いします」
「じゃ、後で教えますね…っと、あとは晴さんと祐那さん」
「はい」
「2人はもう流石ですね…。
俺から言えることはないです。
頑張ってください」
「頑張ります!」
ちらっと3人を見つつ言うと、伝わったのかしっかり頷く2人。
…これであと3日、どうなるのか分からないけど、できることを全部やっていかないと…。
「…ちなみに、この感じでもう一曲も…?」
「あ、それなんですけど…」
「…けど…?」
「この前、全体通して踊れたので動画を織君たちに…」
「……送ったんですね…?」
「…送ったら、もちろんOKが出なくて」
「…やっぱり…」
「簡単な曲に変えてくれるそうです」
「…あの織くんが…」
「歌って踊ってが大変なのは1曲で十分って言ってました」
「…ああー…」
「ってことで、1曲だけ、これだけが大変で」
「これ、ダンス細かく分けないで全員のパート増やしたらダメですか?」
「あ、サビ以外にも?」
「にも。
そうすると確認がしやすいかなって」
「…確かに。
じゃあ、ここの振り付けを祐那君に合わせて…」
「あ、じゃあこっちは晴くんに合わせたら踊れそうだね」
「あとは…自主練用動画とか…」
「あ、それはもうみんな共有してます」
「じゃあ…あ、3人で出来ないところを教え合う…か、復習しながらやるとか」
「あー、確かにそれやると教える側もしっかり身につくっていう」
「そうそう。
…まあ、冷さんは多分教えるところがないと思うけど」
「…頑張りまーす」
「…うん、俺が言えるのはこれくらいかな?」
「ありがとうございまーす」
「冷さん、見せたのが俺で良かったね」
「…ほんとにそう思ってる」
「まあでも織くんから簡単なのが来たらダンスは変わるだろうし、そっちのことも考えて…。
頑張ってください!
…俺も見に来れる時は見に来ますね」
「お願いしまーす。
じゃ、今日はボクたちも解散で!
自主練する人は?」
「あ、じゃあ俺」
「…俺も」
「おれも…」
「じゃあ鍵はお願いしまーす。
お疲れ様です!」
「お疲れ様でーす」
「流衣くんはどうする?」
「俺は明日オフだから、もうちょっと見て行きます」
「じゃあ、3人をよろしく♪」
「はーい」
バタン
そして、残った3人と俺でとにかく踊っては撮って、踊っては撮ってを繰り返して。
…なんとか、全員が苦手を少し克服して。
「…ここまでやれば、大丈夫かな」
「…ありがとう」
「ありがとうございました…!」
「ありがとう」
「でも、1つだけ」
「?」
「昨日からあんまり寝てないわけだから、無理はしないこと!
うちの竜を思い出してああはならないようにしてください」
「…ああ…」
「わかりました」
「ああ」
「ってことで、今日…もう次の日になって結構経ってるけど…。
は、解散!
お疲れ様でした!」
みんなでレッスン室の掃除をして出たところ、次に使おうとしてたらしい竜に出会う。
「…なるほど」
「…?」
思わず、全員でなるほどと言ってしまい、顔を合わせて笑う。
不思議そうな竜にレッスン室を譲ってそれぞれと別れる。
…最後は、冷さんと2人残って。
「冷さん」
「ん?」
「レッスン見た時、冷さんが全部だめって言ったけど」
「…言ってたな…」
「あれ、逆に言えば練習しがいがあるし1番成長出来る、ってことだからね」
「…ああ」
「当日楽しみにしてる!」
「出来るだけ、頑張る」
グサっときていた冷さんが最後にちょっと笑って。
その顔を見たら、なんとなく上手くいきそうな気がした。
「…よし、じゃあ俺も今日は出来るだけ寝て出かけないと!」
「そういえば、今日の予定って?」
「雨月、雪月と買い物!」
「…あー。
ま、楽しんで」
「もちろん!」
*次に続く…
→次の話(3話)
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