ぽつぽつと雨の音が聞こえる共有ルーム。
今日は珍しくaqua全員がオフだから何かしたいなーと思ったのがさっき。
「…で、えーっと…?」
「トランプと花札、ゲームに映画!
みんな集めてみた!」
「ほんとに言ったもの全部あるけど…。
せっかくの雨の日、全員がオフだし何か別のことしない?」
「…別のこと…例えば?」
「例えば、最近出来て気になってるカフェに行くとか」
「乗った」
「いや早い早い。
まだ候補はあるから…」
「次は?」
「次は、みんなでおやつ作りをする…とか!」
「……作るのは?」
「アップルパイかクッキーかな。
ちょうど材料が揃ってるし」
「じゃあ、俺アップルパイ作ってみたい!」
「俺も、作り方覚えておきたいかも」
「よし、じゃあみんなエプロンしてキッチンに集合!」
「はーい」
「ああ」
…こうして。
雨の日のデザート作りが始まったのだった。
「よし、準備おっけ〜」
「エプロン、お揃いので買ってよかったね」
「……良かった…」
「流衣、教える人いないと作れないからな?」
「…わかってまーす…よし、とりあえず2人とも後で写真撮らせて……動画にしよう」
「…そこまでか…」
「こんなに可愛い2人を写真で終わらせるのはもったいないでしょ?
それに、うまくいけばRTBに載せられるかもしれないし…」
「確かに。
じゃあ作る時もじゃーん!ってやった方がいい?」
「…材料とかも見せていったり…」
言いつつ、2人でじゃーん、のポーズをする…と、流衣が崩れ落ちる。
…流衣…。
「可愛い……。
動画にしてRTBに出すのやめようかな…」
「ま、出すかどうかはさておき撮るのは別にいいだろ。
見返せるし」
「はっ、確かに!
じゃあカメラセットして……」
「さすが流衣、動きが素早い…」
「カメラとか、三脚とかいつ持ってきたんだろうね…?」
「カメラの準備も終わったし、さっそく作ろっか」
「はーい。
まずはパイシート出して…はっ、りんごの皮剥き…!」
「あんまりやってこなかったから出来るかな…」
「大丈夫大丈夫、出来なかったら俺がやるし…。
とりあえずやってみて?」
「わかった!
…えーっと、ここを持って…」
「…わ、剥き始めるとちょっと楽しいね」
「楽しい…けど、うまく繋がらない…」
「最初からそれだけ剥けてたらすごいと思うけどね?
上手上手♪」
「…まあ、こういうのは慣れだな」
「俺は竜も普通に剥けてることにちょっとびっくりしてるけどね…?
いつ練習したの?」
「ちょっと前、流衣にコンポートの作り方教わった時から」
「…ああー…。
あったね」
「あれ、色々に使えるからたまに作ってる」
「もしかして冷蔵庫のコンポートって…」
「たまに俺」
「たまに竜だったんだ、通りでいつもとちょっと違うなって…」
「ちょっと違うのか」
「それはまあ、作る人によってね?
美味しくないってわけじゃなくて…個性がある、みたいな」
「…なるほど」
「って話してる間に2人がもう剥き終わってる…!
お疲れ様!」
「楽しくなっちゃって、2つも剥いちゃったけど使える?」
「使える使える!
さっき言ってたコンポートにして明日の朝食べ比べしよう♪」
「コンポート…って砂糖で煮たやつ?」
「そうそう。
ジャムにするって手もあるし、…そのまま食べてもいいしね」
「じゃ、半分はそのまま、もう半分はコンポートで!」
「俺のは半分ジャムがいいかな」
「了解!
じゃあ同時にやっていっちゃおっか」
「はーい」
ってことで、ジャム・コンポート係とアップルパイ係に分かれて。
…って言っても途中からアップルパイに戻るけど。
作業を進めていくのだった。
「…ちょっと焦げた気がする…」
「どのくらい煮ればいいのかちょっと分からなくなるね…」
「ちょっと焦げちゃっても食べればそんなに変わらないし、大丈夫大丈夫!
まずは完成させるのを大事に……って竜、味見早すぎ…!」
「…美味いな」
「…じゃあもうこのままでこっち完成にしてパンとかヨーグルトに乗っけて食べる用にしちゃう?」
「…あ、そしたらちょっと焦げてもあんまり気にならないね」
「そうそう、そういう用に……って竜クラッカー持ってくるの早いし減る減る…!」
「まずは竜を止めないと…!」
「そうだね…」
なんてことがあって、数分後。
「…いい?竜。
いくら美味しそうでもつまみ食いしたら2人の大切な、大切なコンポートとジャムが減るんだからね?
それにまだアップルパイだって途中だし作る時間なくなったら……」
「…これは長そう…」
「先に、レシピ見ながらアップルパイ進めようか」
「だね」
2人をちらっと確認しつつ、パイシートの準備を進める。
…えーっと、フォークで穴を開けて片方は切り込み……。
「こんな感じかな?」
「多分…?」
まだ、流衣が竜のお説教から帰ってこないからなんとなくで穴を開けたり切り込みを入れていく。
…次ってもうさっきのコンポート入れるんだ。
「…どうする?」
「俺たちだけで完成まで進めて、びっくりさせちゃう?」
「させちゃおっか」
「じゃあ、さっきのコンポートを生地に乗せて……」
てきぱき、とまではいかないけど予想よりは手際良く乗せて閉じていけているはず。
あとは溶き卵…溶き卵塗るハケ…ってどこだっけ…。
「雪月、ハケの場所わかる?」
「溶き卵塗る用の、だよね。
…うーん…」
2人でどこだっけ、なんて悩みながら棚を開け閉め。
この辺にお菓子用のゴムベラとかあるからあるような……。
「探し物はこれかな?」
「!
流衣!」
「ごめんね、お説教長くなっちゃって」
「それはいつものことだから大丈夫…だけど、よく俺たちがハケ探ししてるって気づいたね」
「この状態のアップルパイの生地たちを見たからね。
そろそろかなーって」
「…さすが流衣…」
「じゃあ、溶き卵から教えてもらえる?」
「もちろん!
…って言っても普通に卵を溶いて塗るだけなんだけど…。
あ、オーブンの予熱しておくね」
「はっ、予熱…!」
「…忘れてたね…」
2人でやっちゃおう、なんて言いながら、予熱の存在を忘れていたりハケの場所をよく分かってなかったり。
まだまだだなーと思いながら、流衣に感謝して。
溶き卵を塗ったパイをオーブンに入れる。
「美味しくなるかな…。
おいしくなーれ!」
「なる、と信じよう。
…おいしくなーれ…」
「…うっ……」
小声でおいしくなーれ、と唱えていたら後ろから流衣の呻き声。
いつものこと、ではあるけどちょっと怖い。
「…2人が、可愛すぎる…。
これ動画撮ってるんだよね…見返そう」
「…甘い匂い」
「あ、竜」
「竜、足は大丈夫?」
同じ姿勢で30分、怒られ続けてた竜がそっとオーブンに近付いてくる。
…これ見ると足は大丈夫そう。
「ああ、とりあえず足は大丈夫。
…流衣」
「?」
「もうつまみ食いはしない…とは言い切れないけど、悪かった」
「しない、って言い切らないのが竜らしいけど…。
ちゃんと謝れたから、よしとしようかな。
あと、謝るのは俺もそうだけど2人にも、だからね」
「…ああ。
雨月、雪月、つまみ食いして悪かったな。
…次からは多分、きっと、おそらくしない…はず」
「すっっごい怪しい…。
でもまあ俺たちそんなに気にしてないし!」
「うん。
それ含めて、竜だな、って思ってるから」
「ありがとう」
「それも含めてって良いのか悪いのかわかんないけど…。
まあ、2人がいいならいっか。
…あ、そろそろ時間じゃない?」
チン、とオーブンが音を立てて焼けたことを知らせてくれる。
開けると、ふわっと甘い匂いがして、こんがり良い色になったアップルパイたちが見えた。
「美味しそう!
さっそく食べちゃう?」
「食べちゃおう!
あったかいうちが美味しいからね♪
竜、これに合いそうな紅茶選んでもらえる?」
「わかった」
「さすが竜、目が輝いてた…」
「楽しいおやつタイムになりそうだね♪」
その流衣の言葉通り、竜の選んだ紅茶はアップルパイにピッタリで。
最高のおやつタイムになったのだった。
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