ゆるラジ*5「ちっちゃくなった……」 / 2

ミニ会話シリーズ2話目です。

1話目を読んでない方はこちらから!


俺と竜がお互いに過去の話を止めあっている中、知らない間に流衣が俺たちの話をしていたようで。

もう仕方ないか、と静かに聞くことにした。


「…それで、その後は…?」


「冷さんが竜を担ぎ上げて…」


「いや待った」


「それはさすがにない」


「2人で止めなくても…。

じゃあ、次の話は〜…」


流衣視点で語られる話は8割捏造のようで、でもあんなことあったな、と思えそうな話もあって。

…つまり言うと、俺たちが話すよりわかりやすかった、ということだった。


ガチャ


「たっだい…何か楽しそうな話してる!」


「お、天も混ざる?」


「混ざる混ざるー!」


「こら」


「じゃ、天も来たし移動するか」


「じゃあ、続きは2人のいないところで♪」


「流衣?」

「流衣…」


「冗談冗談♪

さて、じゃあ俺はモンブランを仕上げちゃおうかな〜」


「!」


「じゃ、移動するか…」


「はーい」


重なった天と晴の声を聞きながら、少し疲れたまま歩き出す。

…いつか、俺たちの話をする時は覚悟決めるか…。

なんて、思いながら。


ガチャッ


レッスン室に入ると、真っ先に鏡の方へ走り出す晴。

…そういえばしっかり全身は見てないっけ。


「これが…AquICE寮レッスン室…!!」


うん、まあそうだろうと思った。


「ここで先輩は前のライブの時レッスンを……。

空気が…」


「残ってるわけあるか」


「えーっと、もしかして晴さん変…」


「変態…」


「合ってる」


「先輩?!」


「で、ここに来た目的は?」


「天がどれくらい新曲のダンスを踊れるかどうか」


「…えっ…」


「ってのは建前で、いやまあそれも見ときたいけど。

晴がどう踊るのか見てもらおうと思って」


「…なるほど…?」


事情を知ってる竜は頷いて、天を首を傾げて。

当の本人はよく分かんないけどやるぞー!な感じ。

…高校生、高校生か…。


「じゃ、とりあえず適当な曲かけてもらって!」


「じゃあ…この間の『colorful・grow』で」


「…うっ…」


「冷にダメージがいくの、面白いな」


「竜…?」


「ま、まあまあ。

じゃあ曲かけまーす」


ピッ


〜♪


直前までふざけ合ってた俺たちを見てキラキラ…ギラギラ…?してたのも曲がかかると消えて。

さすが元ダンサーと言ってしまうくらいのダンスだった。

…と、いうかこの前より踊れてる…?


ピッ


「こんな感じです!」


「……」


「…?

せんぱーい?」


「いや、やっぱすごいなと思って」


「!!

ありがとうございます!」


「やっぱ前より踊れてる?」


「気がします!

体がちょっと動きやすいっていうか…。

でも技術的にはまだまだ…」


「…へえ……」



「俺思ったんだけど」


「?」


「晴さんってやっぱりすごい人…?」


「いや今更…?」


「いや、だってこう、普段は…こう…」


「まあ分かるけど」


「それなのに、踊るとあんなにかっこよくて!

…普段からかっこいいままだったら…」


「まあ…」


「あれ、ボク褒められてけなされてます?」


「まあ、晴は言動がこれだから」


「これってなんですか!」


「ほら」


「…うーん…」


「ボクだって好きでこうなわけじゃ……はっ!」


ピコン、と頭の上にアイコンが浮かんでそうな晴。

…ちょっと身長伸びた…?


「先輩!

竜君!」


「ああ」


「おめでとう」


「…?

よく分かんないけどおめでとう!」


「ありがとうございます!

これでちょっとずつ夢に近づいてます!」


「…夢…?」


夢ってなに、と竜に目線で問うと、さあ?と返ってくる。

…すごい嫌な予感だけしてる。


ガチャ


「みんな差し入れ…ってなにこの空気…?

あ、晴さんおめでとうございます!」


「ありがとう!」


「モンブラン…!」


「あー、こうなったら竜はダメか…」


「?

冷さん早くしないとモンブラン竜が食べちゃうけど…?」


「いやそれは良いんだけど。

晴が変なことを言ってて」


「…変なことを言うのは前からじゃ…?」


「まあそうなんだけど。

ちょっと気になるっていうか?」


「…なるほど。

じゃあ、俺の方でもちょっと見ておくね」


「ああ、よろしく」


まあ、頼んだ結果そんなに重要なことじゃない場合もあるけど。


「って、それよりモンブラン!

もう終わっ…て、ない!

冷さんの分1つは残しておいてね、竜!」


「…もぐもぐ(こくり)」


「ほんと、甘いもののことになると小学生かそれ以下になるな…」


「そういうところも可愛いしほっこりはするんだけどね」


「けど?」


「普段がああだから…」


「…あー」


急いで進めなければいけないようなものはないようにしているはずなのに、〆切前にはいくつもの曲を仕上げなければいけない状態。

…まあ、竜のこだわりが原因だし、最近は徹夜も数えるくらいしかしてないらしいから良くなった方だとは思うけど。


「これも、どうにかしないといけない問題の1つ、か…」


「まあ、でも竜も最近は共有ルームにいることが増えたし、仕事自体も一杯一杯になるほどは抱えないようにしてるみたいだから…」


「ゆっくりなんとかしてく、って感じだな」


「そうそう。

…ってほらモンブラン!

今日のはこだわって作ったから絶対食べてね?」


「はいはい」


休憩と称してゆったりした時間を楽しむ、のも悪くない。

…諸々の片付けないといけない問題はさて置いて。


「…そういえば祐那は?」


「祐那君はs☆e寮体験ツアーに参加するって」


「なにそれ」


「悠希先輩が言ってたんですけど、ヒロ君のためにs☆e寮の端から端までをくまなく探検する会……ってことは!」


「そんな期待した目で見てもうちはやらないからな」


「…えー…」


「まあ、やるとしたらそこにいる天とか陽とか、あと雨月と雪月がやるだろ」


「確かに…!

帰って来るのが楽しみ…って、みんなにはなんて言うんですか?」


「ヒロ・祐那と1日交換」


「雑…」


「それくらいしか言えないだろ。

まあ、交換が終わって元に戻れたら話すけど」


「でも、それくらいで言っておく方がみんなも変に考えなくて済むかも…?」


「それ、流衣たちは変に考えるのか…?」


「まあ多少は?

タイミングによっては俺たちがそうなっててもおかしくなかったわけだし…。

社長、そんなことするほど身長もう伸びないのかな」


「伸びないだろうな…。

あの人もう30近いし」


「そんなに…?!

25とかじゃなくて…?」


「流衣たちとほぼ変わらなくてどうするんだよ」


「…はっ、確かに…。

見た目から高校生とかにも見えるし、大変そうだなって思っちゃって…」


「ま、本人は高校生どころか小学生に間違われて事務所に入れてもらえないって聞いてるけど」


「…それなら小さくするんじゃなくて背を伸ばす薬を作れば良いのに…」


「俺もそう思う」


「うちの事務所、社長も社員もみんなちょっと変わってるよね」


「俺を見て言うな。

見返そうか?」


「俺はそんなに変わってないでしょ!

…多分」


「アイドルサポート時代の流衣くんはあんなに可愛くなかったのに…」


「可愛くないのは普通じゃない…?」


「いや、アイドルやってる時のがのびのびしてるし楽しそう」


「それはもちろん!

ずっと夢だったしね」


「あの流衣がここまで変わるとはな…」


「俺だって成長するからね」


「知ってる」


「それより、晴さんが天と探検行っちゃったみたいなんだけど」


「…流衣、そう言うのは早く言えって言ったよな?」


「俺言われてない気がする」


「…。

まあ、とにかく探して帰って来た人から話するか」


「えっもうそんな時間…?

ちょっと冷さん探す前に夕飯作り手伝ってくれない?」


「それやってたら探す時間なくならないか?」


「今日鍋の予定だから早く済む…はず!

野菜切ってくれるだけでいいから!」


「…了解」


「やった」


「で、モンブランいいのか?」


「…あ……」


モンブランを食べる、という当初の…当初の?目的を忘れてたのでとりあえず食べて。

…とりあえず、なんて言って流衣に怒られはしたけど。

なんとかレッスン室から出たのだった。


ガチャ


「それで、こっちには冷さんたちの部屋が……」


「ストップ」


「…?」


「晴、俺の部屋入ったら明日を待たずに戻ってもらうから」


「……くっ………」


「そんなに変なものを隠して…?」


「むしろとられるかと」


「…ああ…」


そんなこんなで今いる全員が集まった共有ルーム。

俺と竜、天、高校生くらいの姿(ちょっと伸びた)の晴、流衣。

あとは、誰が先に帰って来るかだけど…。


ガチャッ


「ただいまー!」

「ただいま」


「おかえりー。

珍しい組み合わせ!」


「今日たまたま帰りに空と会って!

…って晴さん?」


「おかえり。

ちょっと話…って待った、LEENEは?」


「LEENE?

仕事からすぐ帰って来たから見てないけど…あ、なんか来てる」


「…俺も…あ。

晴さんが遊びに…?」


ちら、と晴の方を見て視線をスマホに戻す空。

雨月も同じく。


「じゃあ探検会!」


「もうしちゃった」


「なるほど天がいたかー…。

って、今日浅葱いなかった?」


「……あ」


全員すっかり忘れて…いや、流衣だけは覚えててちょこちょこ見に行ってたみたいだけど。

浅葱の部屋へ向かう。


コンコン


「浅葱?」


「……」


コンコン


ゴンッ…


「?!」


「今の…?!」


「もしかして倒れて…?!」


ガチャッ


急いで部屋に入ると、模様替えをしていたらしい浅葱がこちらを見て。

不思議そうな顔をした。


「いや不思議そうな顔したいのこっち…!

浅葱、作曲は?!」


「さっき終わって…いや、終わってはないけれど一息ついて、模様替えをしようかと」


「…流衣には?」


「…伝えた、ような」


「……戻るか」


「浅葱、次からみんなにLEENEとかして動いてね…?」


「?

わかった」


バタン


浅葱がなんともなさそうだとわかって共有ルームに戻る途中。

また誰か帰って来たのか、声をかけられた。


「あ、ただいま」


「おかえり…って奏良いところに!」


「…?」


「今、浅葱の部屋行ったら模様替えしてたんだけど心当たりは?」


「…えーっと…。

うまくいかなくて気分転換…?」


「…なら、良かった…」


「…?

とりあえず、浅葱は大丈夫そうなんだね?」


「うん、とりあえず。

あ、流衣が今日は鍋にするって」


「あ、じゃあちょうど良かった。

さっきスーパーで……」


話し始めた奏の動きがぴたりと止まる。

…何か不思議なことでも、……ああ、晴か。


「晴さん?」


「遊びに来たんだって、1日だけ!」


「1日だけ…。

えーっと、いらっしゃい?」


「お邪魔してまーす!」


不思議そうな奏にまあまあ、と言いつつ共有ルームへ。

…この感じだと、全員に説明し切るまで疑問抱えたままだろうな…。

そう思いつつ、約束通り流衣の手伝いを始めた。


*次に続く…

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