ゆるラジ*5「ちっちゃくなった……」 / 1

新しいミニ会話シリーズの1です。

予定では3で終わります。


ガチャッ


「祐那、緊急って一体何が………は…?」


急いで向かった共有ルームでは、困ったような顔をしている祐那…と、見慣れた髪色の見慣れない子供がいた。


「えーっと、アタシにもよくわからないんですけどー…。

ヒロくん、急にこうなっちゃったみたいで」


「…ってことは、やっぱその子がヒロか…」


「どうします?

育てちゃいます?」


「普通に、元に戻す方法考えるだろ」


「先輩、それだと面白みが!」


「なくていい」


「えー」


「とりあえず、s☆e寮の方行って聞いてみるか」


…と、考えたところまではよかった。

多分。

……s☆e寮で、ちびっ子が増えることを知らなかったから。


ガチャ


「!

せんぱい!!!!!!」


ドスッ


「…あーー……」


タックルされた時に見えたのは金色と黒の髪。

…こいつもか…。


「せんぱい、ぼくどうしてこうなったのかわかんなく…ひろくん?!」


「邂逅した…」


「せいくん?」


「ひろくんもちいさいんだ…。

はっ、おままごととかするべき…?」


「そこまで子供に戻ったらもう相手しないからな」


「おとなしくしてまーす…」


「で、悠希は?」


「ゆうきせんぱいはー…あ」


「……あ?」


「あくあいすりょうにいってげんいんをさぐるって……」


「そういうのは早く言えよ…」


また戻ろうかと後ろを向いた時、悠希…ではなく社長がいた。

…社長…?


「小さくなったなー、ヒロに晴」


「のん、にこにこしてるとちょっと怖いし変な人感増すよ?」


「ねりはちょっと静かにしてて」


「…なんでここに…」


「ちょっとした手違いで誰かを小さくする薬が出来ちゃって、様子見に?」


「…あー、のんくん社長ならやりそうですね…」


「飲んだのは2人、他の人はならなかったんだ」


「ならなかったも何も怪しいものとか食べた記憶が……。

…昨日寮に届けられた謎のジュース…?」


「ああ、あったかも?」


「確かに、ヒロは全く違和感なく飲んでたな」


「あれ、おいしいっていうよりむのあじがした…」


「無の味」


「あれ、色だけ変えてあって味は水だから」


「そうだったんですか?!」


「です。

それで、悠希くんは?」


「あー、多分すぐこっちに来ると…」


ガチャッ


「?!」


「あ、久しぶり〜」


「どうも?」


「ええっと…。

お久しぶりです、社長…ねりさん…」


「そんなに怖がらなくても。

そんなにボク怖い?」


「…えっと…その、はい」


「怖いってーねり。

どうする?」


「どうするとか言ってる時点でもう怖い。

…それより、これ」


「?

なんですか?」


「ちびっ子を元に戻す薬。

まあ、ちびっ子にする薬自体まぐれで出来たからちゃんと戻る保証はないけど」


「えっ」


「constellationってそんなに簡単に薬とか作れるところだったんですね…」


「そんな怪しい組織に就職した覚えないんですけど」


「まあまあ、これはのんの趣味の一環みたいなものだから」


「…社長……」


「ねりのせいでまた社員に嫌われてない?」


「元々、出会ってすぐ縮めって言う社長を好く人は少ないから大丈夫」


「それは仕方ないでしょ…?!

みんなボクより背が高いし!!

…いつまでもボクはここの社長って認められないし…?」


「はいはい。

ってことで、よろしく」


「…あ、はい…?」


「あ、ちなみに。

次の会議は水曜日だから」


「はい!」


バタン


「…言うだけ言って、渡すだけ渡して帰ったな…」


「おれ、本当に社長の趣味が怖いです」


「人を小さくしたり大きくしたりする薬が作れるって社長の趣味で収まってないしな」


「ま、まあそれはともかくとして…。

この薬、2人に飲ませちゃいましょう!」


「躊躇ないな、祐那」


「このままでもものすごく、ものすっごく可愛いけど仕事にならないので!

心苦しいですけど……」


心苦しい、と言いながらちびっ子ヒロを撫でる祐那。

ヒロはさっきからほぼひと言も発さずされるがままっぽいけどそれで良いのか…。


「そば、たべてない…」


「あはは、さすがヒロくん」


「ヒロ、元に戻ったらどこかで食べて来れば?」


「そうします、ぜったい…」


「蕎麦への強い意思…」


「はっ、そういえば最近ヒロくんお蕎麦食べてなかったかも…?」


「そこにこのちびっ子化だからか…」


「ちいさいと、たべにいけないので…」


「たべにいくときはぼくもいくからね、ひろくん!」


「じゃあ、りょうのちかくの……」


「ま、続きは戻ってからってことで」


「冷さーん…」


「ん?」


「これ、とりあえず袋から出したんですけど、ものすごい色してて…」


「あー…」


ちら、とそちらを見ると黒になる手前、くらいの色々な色が混ざった薬。

そういえばあのジュースもものすごい色してたような。


「まあ、あのジュースを躊躇なく飲んだ2人なら問題ないだろ。

カプセルタイプだし」


「ちゃ、ちゃんと2人が元に戻りますように…!」


そう悠希が祈って2人に薬を飲ませる。

…小さいとそういうところも不便だな…。


ボフンッ


「…あ」


「…なんか、まだ違和感があるような…」


怪しげな煙に包まれて出てきた2人は、確かにさっきよりは大きくなっていて。

…でも、どこかまだ幼い様子。


「やっぱ不完全だったか、あれ…」


「…あ、メモが入ってます」


「ちょっと見せて」


「はい」


ペラ、とメモをめくると、そこには社長…いや、ねりさんが書いたらしき文字が。

《*もしも、この薬で戻らなかった場合

ある程度までは戻るから、2日ほど好きなことをさせて成長させてね》


「…2日もかかるのか、ここから…」


「2人とも、今どのくらい?」


「見た目で言うと…高校生、くらい?

今ならボク制服似合うかも!」


「大丈夫、大人になってもきっと似合うから」


「じゃあ戻ったら着ますね!!」


「着なくていい」


「…それで、好きなことをって言うと…」


「蕎麦」


「だよなぁ…」


「好きなこと、好きなこと…。

はっ、先輩かんしょ…「晴はダンス大会とかに出させとくか」(´ω`)」


「織くんたちへの説明は…」


「まあ、するとしたら社長のいたずらで」


「…社長への印象どんどん悪くしていきますね…?」


「実際そんなもんだろ、自分のために作ったわけだし」


「そうなんですか?」


「あの社長のことだし、周りが全員小さくなれば自分が1番背が高い、とか思ってそう」


「…それは…。

ちょっと分かります…」


「まあ、でもねりさんが元に戻る方を作ってくれたわけだし。

指示に従って過ごすしかないな」


「はい!

じゃあボク先輩と過ごしたいです!

せっかくなので!!」


「却下」


「早い!!」


「あ、でも良いかもしれませんね」


「…悠希?」


「いえ、あの、普段と同じより、ちょっと違う方が色々勉強になるし成長のきっかけになるのかな、と…」


「成長のきっかけ、ねー…」


未だに目の前でぴょこぴょこしてる晴を見る。

俺が見たことに気づいて、ぴょこぴょこをやめてじっと見て来る。

目を逸らす。

しょぼんとする。


「じゃ、1日はこっちの寮にいてもらうか」


「やった!!

ありがとうございます、悠希先輩!」


「なんでそっちに感謝するんだよ」


「機会をくれたので…?」


「まあそれはともかく。

そうすると説明が倍めんどくさいから…全部社長のせいにしとくか」


「冷さん…」


「ってことで、ヒロ、1日経ったらAquICE寮の方戻ってもらうから」


「わかりました」


「もちろん、晴も1日経ったら戻れよ…?」


「…わ、…分かりました!

1日でやりたいことを全てやります…!」


「なんか怖いけどまあいいか。

じゃあまたLEENEとかで」


「はい!」


バタン


s☆e寮を出て数分。

いつものようにAquICE寮に着いて、ばったり流衣と出会った。

…1番出会いたくなかったやつ…。


「冷さん…」


「流衣、」


「晴さんついにこっちに来るんだ?

いらっしゃい!

…なんか小さくなった…?」


「い、色々あって?

よろしくお願いしまーす!」


「待って、色々突っ込みどころを放置するな」


「憧れのAquICE寮…。

その一歩目を、、今!!」


「…はあ…」


まあいいか、と諦めかけた時。

すっと流衣が近くに来てひと言。


「後でちゃんと俺と竜くらいには説明してね」


「はいはい」


「…それにしても、小さい晴さん…可愛いよね」


「…流衣…?」


「いや、変な意味はないんだけど、ほんとのちっちゃい子みたいっていうか…。

無邪気な感じが」


「まあ、身長だけで言うと少し小さいからな」


「でしょ?

あれで今どのくらいなの?」


「高校生くらい?らしい」


「…高校生…」


「高校生であれだけ自由だったら先が不安になるけどな…、って晴は?」


「え、さっきまでそこに…いない?!」


玄関を開けることなく話をしていたからか、近くにいると思い込んでいた晴がどこにもいないことに気づいた。

…いや、ほんとに小学生か…?


ガチャッ


「せ…いた」


「…ほんとだ…。

まだ部屋に入ってなかったんだ…」


ガチャ、と開けた先、靴が並んでいる、そのすぐそばにいた。

というかあれは俺の靴…?


「はっ…!!!

これはその、先輩の靴だ!って…」


「変態…」


「うん、ちょっと俺もそう思っちゃったかな…」


「いや、別にそんな変なことはしてないです!

ちょっと空気を吸って靴を抱きしめたくらいで…」


「s☆e寮に戻すか」


「?!」


「うん…その方が良いかも」


「も、戻さないでください…!!

ボクなんでもするので!!」


「よし」


「なんでもってことは…あ、買い出しとか…」


「行きます!

…って、買い出し?」


「今日ちょっと寒いからお鍋なんかが良いなって思っててね。

…このリストのもの、買ってきてください♪」


「えーっと……ものすごい量…。

えっこれ1週間…?」


「このリストのものは多分1日で終わると思うけど…。

ほら、うちって人が多いし?」


「…AquICE寮、恐るべし…。

い、行ってきまーす…」


ガシッ


「…?

…あ」


「外にその状態で出たらすぐ戻すからな?」


「…はぁーい…」


しょぼん、として靴を置いて出ていく晴。

…危なかった…。


「…靴、もう仕舞っとくか…」


「あ、じゃあ代わりに大きさ近いし浅葱のを…」


と、あれこれ玄関でやっていると人が来るわけで。


「…えーっと?」


きょとん、とした様子の天がこっちを見ていた。


「おかえり」


「ただいまー…って、2人とも玄関で何を…?

はっ、もしかして新しい遊び…!」


「帰って来たら天と遊ばせよう」


「そうしよう」


「…??」


不思議そうな天を置いて、2人で相談をしつつ共有ルームへ。

…そうだ、部屋も色々なものを仕舞って鍵をかけた方が良いかもしれない。


「…ってことがあって」


「なるほど、じゃあさっき俺が見たのは本物の晴さん…」


「あ、やっぱり天も見た?」


「見た見た!

服がいつものスーツじゃなかったからおかしいなーとは思ったけど、それ以外は特に…?」


「天から見ると身長はそんなに小さく見えないのかな」


「まあ、天だったから気づかなかった、とかな。

で、それはさておき。

これからどうするかってことなんだけど」


「これから…?

普通に晴さんがここに来るだけじゃないの?」


「いや、まあ…。

1日だけここで晴が暮らすって話ではあるんだけど」


「…じゃあ、せっかくだし晴さんいらっしゃいパーティとかやる?」


「飾りつけめんどくさいだろ、1日だけで」


「みんな手伝ってくれると思うよ?

竜と浅葱以外…」


「…ってことは2人は今日も、か」


「今日も、なんだよね…。

竜はともかく、浅葱の方がやばいみたいで」


「奏は?」


「それが、今日は予定が入っちゃってるみたいで」


「…なるほど」


奏がいない、となると浅葱の方がやばいのも分かる。

いや、分かるのもどうかとは思うけど。

そこはマネージャー…が、ヒロだったな…。


「あー、…流衣、今竜呼べるか?」


「甘いもので釣れば。

なんで?」


「ちょっと、事情説明しとく」


「了解♪」


流衣がLEENEで竜を呼び出している間。

天がLEENEで何かを…。


「天?」


「こんな面白いこと、みんなに言わないなんてことは出来ないと思ってつい…?」


「…言っちゃったか」


「AquICEのグループだけです、まだ!」


「じゃ、竜も早いな」


と、呟くのとほぼ同時に共有ルームの扉が開く。


ガチャッ


「…いた」


「お、竜」


「モンブランは?」


「流衣、呼び出したのモンブランか…」


「てへ…。

この話終わったら作るから待っててね、竜!」


「…ああ」


「じゃ、天、ちょっとそこで待ってて」


「?

はーい」


天に聞かれて困る…わけじゃないとは思うけど、一応天から離れて今回起こった出来事を話す。

…全部社長のせいにしていくのを忘れずに。


「…なるほど、だいたいわかったよ」


「天のLEENEとは違うんだな」


「ま、天に言うと広がりすぎるからな」


「了解」


「明日ヒロがこっちに戻ってきた時も多分高校生くらいだと思うから、その辺誤魔化すのをよろしく」


「よろしくって…。

冷さん雑〜…」


「仕方ないだろ、方法がないんだから」


「じゃ、サクユマのケーキで」


「あ、俺はちょっと高めの調味料で♪」


「はいはい、2人が元に戻ったらな」


なんて話をして、くるっと天の方を見る…と、黄色と黒のちびっ子が混ざっていた。


「あ、先輩!

おつかい行ってきました!」


「お疲れ。

で、なんでそんなことに?」


「天君だーと思って遊んでたらいつの間にか?」


今回の件で、晴と天が揃うとテンションが余計に上がってよく分からないことになるらしい、というのを学んだ。


「…まあ、それは良いとして…。

とりあえず、レッスン室行くか」


「…?

レッスン室?」


「どうせなら晴がどれくらい踊れるのか、とか見ておいた方が良いだろ」


「…はっ、確かに!

俺も行きまーす」


「じゃ、俺も」


「俺はモンブラン作ってから、まだやってたら行こうかな」


「了解。

…天、とりあえず着替えて来い」


「はーい」


パタパタと自室へ行く天を見送って。

…というか最初からこれやってから話せばよかったな…。


「先輩、俺ちゃんと戻れますかね…。

ってあ」


「大丈夫、2人には話してあるから」


「いつの間に…!

さすが先輩!!」


「まあ元同僚だし、知っててめんどくさくなることはないかなって」


「…そういえば、ボク先輩が今の先輩になるまでって聞いたことないんですけど…」


「話すか」


「いや竜早いな」


「天が来るまでどうせ暇だし」


「暇って言っても話すことじゃ…。

まあ、じゃあちょっとだけな」


「ありがとうございます!」


「あれは、俺が高校生の頃…」


「流石に遡りすぎだろ」


「…間違ってないだろ」


「ちょっと間違ってる。

高校生だった頃に竜いないだろ」


「…確かに?

じゃ、俺が就職活動してる間…」


「待った」


「…これ、なかなか始まらないやつです?」


「始まらないだろうねー…」


「流衣君」


「2人とも、出会ってすぐの話ってしたがらないから絶対自分が話したいところだけ話すと思うし」


「じゃあ代わりに流衣君に聞いても…」


「いいけど、俺もそんなにちゃんとした話は出来ないよ?

あの頃、俺も仕事に慣れていくのに精一杯だったし」


「それでも聞きたいです」


「…じゃあ、天が来るまで…」


*次に続く…


次の話(2話)

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